読書案内『腸のすごい世界』

東洋医学×分子栄養学

いつも読んでいただいてありがとうございます。
それにしても11月に入ってまだ夏日があるって、この日本はもはや温帯ではないのかもしれませんね(笑)

今回は本の紹介です。
書名は『腸のすごい世界』(國澤純)。

腸内環境ってすごくおもしろいので、発酵にハマっていた頃から分子栄養学までのそれ関係の本が我が家には30冊以上もあるほど僕の興味がはじけている分野です(笑)

おもしろいだけでなく、腸は健康のためにために欠くことのできない存在でもあります。
そんなことに触れながら、紹介していきましょう。

これまでの考え方を簡単に

腸内細菌を良くするための方法については、これまでプレバイオティクスプロバイオティクスシンバイオティクスという考え方が一般的に説明されていました

シンバイオティクスはあまり有名じゃないかもですね。

これらをひとことで簡単に説明すると、プロは良い菌をいれること、プレは良い菌のエサをいれること、合わせて行うのがシンという感じになります。

皆さんが大好きな腸まで届く乳酸菌入りヨーグルトを食べるのはプロバイオティクスですね。
食物繊維を摂ってお通じを良くしましょうというのは、プレバイオティクス。

もっとも、食物繊維には水溶性と不溶性があってそれぞれ役割が違うので、その人の症状に合わせて使い分けないとあまり意味がありません。

また本書でも触れていますけど、食物繊維を摂っても腸の中でこれを分解できる糖化菌が不活性な状態だったり、菌そのものが少ないことが原因でお通じが改善しない場合もあります。

話を元に戻しましょう。

この本の特徴

この本では、最新の腸や腸内環境研究の内容がわかりやすく紹介されています。
興味の出た人は是非読んでほしいと思いますので、ここではごく簡単に紹介するようにします。

腸内細菌というのは人によってとても異なり、その人の体型から健康状態まで、とても幅広い影響をカラダに与えます。

そしてある意味でこの本のキモになっているのが、腸内細菌は代謝産物であるポストバイオティクスを生み出すことで、カラダに有用な効果をもたらすということ。

最新の知見による腸の役割は多岐にわたっていて、消化管としての機能、異物の侵入を防ぐ免疫機能、体型を左右する機能、老化を抑制する機能、メンタルを安定させる機能などがあります。

このほかにも、漢方薬などに代表される薬の効きやすさとか、同じ食事での太りやすさの違い、疲労の回復度合い、ストレスの感じやすさなど、これまでは基本的に体質の問題と思われていたことについても、腸内細菌が関係することが多いことがわかってきました。

私たちの外見的な特徴の多くは、遺伝子の影響が大きいですね。
でも、たとえ同じ遺伝子を持つ一卵性の双子であっても腸内細菌の状態は異なっていて、太りやすさやアレルギーの有無などについても異なるんです。

そうそう、痩せ菌のことも日本人に特化した内容が結構詳しく書かれています。
どうです、読んでみたくなりましたか?

ポストバイオティクスとは?

この本のキモでもあるポストバイオティクスについて、もう少し紹介しておきましょう。

ヒトの腸内細菌の数は100兆個にもおよび、人体を構成する細胞数(37兆個)よりも圧倒的に多いんですね。 地球上でもっとも菌が密集している場所なんですよ。

しかも形やはたらきが異なる様々な菌が集団を形成して腸内に棲むことで、あたかもひとつの生命体(あるいはひとつの臓器)のようになっていて、これを腸内細菌叢とかマイクロバイオーム腸内フローラなどと呼びます。

腸内細菌が生みだす代謝産物はポストバイオティクスと呼ばれ、食品成分を材料に腸内細菌がつくりだす健康に有用な代謝産物のことです。

代表的なポストバイオティクスが短鎖脂肪酸

これは腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖をエサにしてつくりだす脂肪酸です。
役割としては、腸内に関しては有害菌の発育抑制、有用菌の発育促進、腸管のバリア機能の強化などがあります。

全身への影響としては、免疫機能の調整、肥満の予防、生活習慣病の改善などがあります。

ストレス緩和に有効なGABAは脳でつくられますけど、ポストバイオティクスとしてこれをつくりだす腸内細菌がいることもわかってきています。

おもしろいのは、腸内細菌が食物繊維から短鎖脂肪酸をつくるには、複数の菌が分業ではたらく必要であることです。

まず糖化菌が食物繊維を分解して糖をつくり、それをエサに乳酸をつくる乳酸菌、乳酸と酢酸をつくるビフィズス菌などが、リレーのように食物繊維の形を変えながら最終的に短鎖脂肪酸をつくっているんです。

つまり、食物繊維、糖化菌、乳酸菌、ビフィズス菌がキチンとそろっていて、それぞれが活性化していないとダメだってことですね。

おもしろすぎるでしょう(笑)

腸内環境を良くする方法

そして最高の腸内環境をつくるには、  
 ①良い菌を摂る
 ②菌がよろこぶエサを食べる
 ③ポストバイオティクスを利用する
の3つがポイントになります。

ここも少し説明を加えます。

①良い菌を摂る

いま自分の腸内にいる菌にシッカリとはたらいてもらうには、有用菌であるビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌などがたくさん含まれる漬物や納豆などの発酵食品を食べることに尽きます。

発酵食品は世界中に非常に多くありますけど、基本的に伝統食として長く残っているものにはカラダにいいものが多く含まれていると考えられます

食品やサプリメントから摂取する菌はいわゆる通過菌(1日程度で腸から出ていってしまうのでこう呼びます)となりやすく、基本的には腸内に定着しにくいんです。

常在する菌に良い刺激を与え腸内環境を改善する助けとなるので、良い菌は習慣的に摂り続けることがカギとなります。

②菌がよろこぶエサを食べる

有用菌を増やしたり良い状態にするためには、食物繊維を多く含むオーツ麦や大麦、海藻類などを摂りたいですね。

また難消化性オリゴ糖を含むタマネギ、ゴボウ、バナナ、豆類なども菌がよろこぶエサになります。

③ポストバイオティクスを利用する

そのためには様々な種類の食べものを摂ることです。
つまり極端な食生活をしないように心がけることが大切だと書かれています。

また菌のリレーをサポートするためにも、糖を利用する代謝過程で必要になるビタミンB1を摂りましょう。
ビタミンB1は、豚肉、大豆、玄米などの食材に多く含まれています。

著者は、理想的な腸内環境は「できるだけ多くの種類の腸内細菌がバランスよく存在する状態」であるといいます。
それによって生み出される代謝産物も多様になるからですね。

そもそも、ヒトという生き物にこれだけ多様な菌が共生しているのは、ヒトがこれまでいろいろな環境に住み、多様なものを食べてきたためといわれています。

逆に食べたいものがいつでもどこでも手に入ってしまう現代では、好きなものばかり口にしがちです。

結果としてよく食べるものを好物とする菌は活性化しますが、それ以外の菌は減って腸内細菌の多様性が低下します
これでは、栄養バランスのみならず腸内細菌バランスも偏ってしまいます。

「バランスよく」という言葉ですべて片付けてしまうのは嫌いですが、カラダのなかで密かに頑張ってくれている彼らのためにも、いろんなものを食べるようにしましょう(笑)

やっぱり長くなってしまいました(笑)
今回はこの辺で。

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