いつも読んでいただいてありがとうございます。
今回は健康になるための基本的な考え方について書いてみます。
考え方の方向性みたいな話です。
質的栄養失調
現在の日本は飽食の時代といっていいでしょう。
基本的に食べるものに困ることはあまりありませんし、逆に食品廃棄が問題になっていたりします。
そして分子栄養学的には「大多数の人の食事は量的(つまりカロリー的にという意味)には足りているけれど、栄養素は質的(栄養素のバランスという意味)に足りてない」ということは確かそうです。
その結果として生活習慣病になり、病院に通って薬を飲み続けても治らない人が多いのだと考えられます。
話はそれますが、「生活習慣病」という名称は使わない方向で話が進んでいるようですね。
この病気の原因には、生活習慣以外にも遺伝や感染症などいろいろな要素が含まれているので、ただ生活習慣病という名前でくくってしまうと、まるでその人の生活習慣がなっていないから病気になったというふうに取られがちだ、というのが理由のようです。
いろいろと気を遣わなくてはいけない世の中になってきましたね。
話を元に戻しましょう。
まあ大多数の人が、食習慣に代表される生活習慣が原因で病気になっているという事実は揺るがないでしょう。
ただし、子どもの6人に1人が貧困状態にあって、先進国の中では最悪のレベルにあるというデータもあります。
そのことによって健康格差が広がっているというのも確かな事実なんですけど、これについては別の機会にしっかりと考えてみたいと思っています。
健康になるためには?
では、健康になるためにはどうしたらいいのでしょう?
ちょっとネットで調べると出てくる健康情報は、基本的に「足すこと」ばかりなんですね。
納豆がカラダにいいとか、このサプリで膝の痛みが治るとか、このドリンクで血圧が下がるとか…、キリがありません。
栄養療法の世界でも、検査や症状から足りない栄養素を推測して、その栄養素をサプリでしっかり摂れば病気が治る的な考え方も多いのは事実です。
でも、それでいいんでしょうか?
問題はそう単純なことではありません。
このことはいつも書いているので「またか」と思う方もいるかもしれませんが、それでも書きます。
例えば鉄不足による不調(貧血や疲れやすいなど)があるとします。
日本人によくあるパターンとしては、胃酸不足や胃の動きが悪いことが原因のことが多いです。
胃が弱いとミネラルをイオン化できないので吸収が悪くなり、ミネラル不足の症状が出てきやすくなります。
ここで足りないからという理由で鉄サプリを飲むとします。
もちろん、医師に出される非ヘム鉄よりは海外サプリのキレート鉄の方がマシなのは確かですが…。
「胃腸」と合わせて呼ばれるように、胃が悪い人は腸も悪い人が多い傾向にありますよね。
そこに鉄をガンガン入れてもうまく吸収できませんし、そのことで逆に腸内環境を悪化させたりもします。
さらに鉄はサビやすいことからもわかるように、炎症を増長させる傾向があります。
そう、単純に足せばいいわけではないんです。
いつも言っている、根本原因に対処しないと意味がないということです。
栄養や食事について「足すことばかり考えていないか?」と、一度疑ってみる必要があると思います。
「引く」という考え方
そこで「引く」ことについて考えてみましょう。
足してもダメなら引いてみようです(笑)
そういう意味で秀逸なのが、東洋医学のカラダのとらえ方のひとつである「虚実」ですね。
虚とは不足、つまりカラダに必要なもの(基本的には気・血・水)が足りないということなので、治療では「補う」という方法を使います。
これは「足す」ですね。
一方、実とは有余、つまりカラダに不必要なもの(これには外邪とか生理物質の停滞などが含まれます)が体内にあるということなので、治療では「瀉す」という方法を使います。
これが「引く」ですね。
このふたつのバランス、あるいは場面に応じて使い分けるということが大事です。
そのためには診たて(つまり個別性を見つけること)がしっかりとできる大事になりますね。
栄養や食事について考えるときも、この診たてが大事です。
その人の栄養不足・栄養の偏りの原因がどこなのかを見抜く力ですね。
それにしても、分子栄養学をやればやるほど、東洋医学の素晴らしさを感じています。
毒の存在
ところで、分子栄養学でカラダを見ていくときに重要な考え方のひとつに「毒」があります。
毒には金属やカビ毒、食品添加物、農薬など様々なものが含まれます。
毒は体内の代謝を落とします。
さらに慢性炎症を引き起こし、免疫の状態を悪化させます。
結果的に動脈硬化、糖尿病、高血圧、心筋梗塞などの生活習慣病になりやすくなるんですね。
それ以外にも、ダイエットがうまくいかないとか、むくみが取れないとか、不妊とか、メンタルが不安定などの原因になっている可能性もあります。
つまり、食べ物を足すことばかり考えていては健康は手に入らないということです。
「足す」ことをする前に「引く」ことが大切です。
この引くことの代表が毒を出すこと。
つまり健康になるためには、まずデトックスが必要だということになります。
ちなみにここでは詳しく書きませんが、東洋医学で考える毒には「三毒」というのがあります。
血毒と水毒と食毒のことです。
これは言葉だけでなんとなくイメージできちゃいますよね。
正しいデトックスとは
デトックスのやり方の詳細まではここでは書きませんが、デトックスにはカラダの準備が必要です。
キチンとしたデトックスはカラダにそれなりに負担をかけます。
ですから、解毒で中心的な役割を果たす肝臓や腎臓の状態を良くしておかないといけません。
毒は基本的に胆汁と一緒に大便で出すので、毒の排泄するためには便通の状態(つまり腸内環境)を良くしておくことも必要です。
デトックスができるカラダを準備しておかないと、正しい解毒はできないんです。
また、分子栄養学で行われるデトックスにはステップが3つあって、正しいステップを踏まないと毒を再吸収して全身にばらまいてしまったりするので、逆効果にもなりかねません。
食事・栄養で「引く」を考えてみる
最後に実際の食事での「引く」を考えてみましょう。
パッと思いつくのは食品添加物かもしれません。
これがたくさんカラダに入ってくると、栄養素をムダ使いしたり、代謝を滞らせたりで、良いことがありません。
でも日本の加工食品には添加物は使い放題に入ってますから、そう簡単に排除はできません。
そんなことばかり考えて袋の裏の表示ばかり見ていると、それこそメンタルがやられてしまいそうですよね。
理想をいえば、天然の素材を自作して自分で調理するしかないです。
そんなことは基本、ムリですね。
じゃあどうするか? ここには最低限、引いた方がいいものだけ挙げておきます。
- 甘いもの(砂糖を使ったスイーツや甘いジュース類)
- 揚げ物(加工品で使用される油は信用できない)
- 添加物(上で書いたことと矛盾するかもですけど、なるべく成分表示を見るクセをつける)
とりあえず、上のものだけでも引いてみてください。
断食という方法
ちょっと余計な話ですが、最近ある場所で断食について少し話すつもりなので、そのネタを少々。
私の父の話です。
父は、鍼灸師になるまでは銀行員をやっていました。
30歳のときに肝臓を壊して(慢性肝炎)、約1年間入院をしていました。
僕がまだ小学校に上がる前のことです。
そんな父が仕事に復帰するために、自宅療養中に近くの図書館に行ったときに目に飛び込んできた本があったそうです。
それが『難病治療のキメ手』(中川雅嗣)。
読んでみると断食で難病が治ったという話だったんですね。
父は早速、著者がやっている伊豆の断食道場に入り、約1ヶ月間(実際にまったく食べなかった期間は2週間)を過ごし、見事に体調を回復しました。
道場での毎日は、水を2升飲み、温冷浴(38℃に3分、15℃に1分を交互に3回ずつで最後は冷浴)をし、灸治療を受け、3回に1回浣腸をされていたそうです(詳細は父の著作集に書かれています)。
この体験を通して自分の一生の仕事はこれだと決心し、仕事の後に夜間部の鍼灸学校に通って鍼灸師の資格を取り、銀行を辞めて開業しました。
僕も小さい時からこの話を聞いていたので、1週間程度の断食は我流でやったことがありますが、とにかく頭がスッキリするのを実感できます。
断食は究極の「引く」で、誰でも気軽にすべきではないとは思いますが、こういうことも含めて健康のためには「足すこと」だけではなく「引くこと」も必要だということを皆さんにも考えてもらいたくて、長々と書いてきました。
今回はこの辺で。