こんにちは、島田です。
今回は特に、鍼灸師の方々向けの内容です。
以前、鍼灸師がキチンと食事や栄養の指導ができるようになるためにすべきことについてブログを書きました。
こちらを読んでいない方は、下記のリンクからまず先にお読んでください。
では早速、内容に入っていきます。
自信をもって患者さんに食事や栄養の指導ができますか?
鍼灸師の皆さん、あなたは患者さんからの食事法や栄養・サプリメントについての質問に、「何となくあやふやに」答えていませんか?
「鍼灸の治療についてはいろいろ学んだけど、食事や生活に関するアドバイスについてはほとんど学んでいない」と感じていませんか?
僕自身のことでいうと、最近ではキチンとした根拠をもって患者さんに食事や栄養の指導ができるようになりました。
- 食事の何が問題なのか?
- どんなものをどんなタイミングで食べればいいのか?
- 逆に摂らない方がいいものは何か?
などを、自信をもってシッカリと伝えられます。
また、患者さんの飲んでいるサプリの良し悪しや、服用量、摂るべきタイミング、現在の症状に効果があるかどうかなどについても、具体的な理由を挙げて答えることができます。
なぜかというと、これまでずっと書いてきたように分子栄養学という考え方を使っているからです。
この記事では、どうすればしっかりと根拠をもって食事・栄養指導をできるようになるかについて、どんなことを考えながら進めているかも含めて、具体的に書いていきます。
また、最後まで読んでいただくことで、分子栄養学と鍼灸を合わせて使うことの意味や意義もよくわかってもらえると思います。
是非、皆さんの臨床に取り入れて、患者さんの病気を根本的に治すヒントにしてください。
「最近よく足がつるんです」という患者さんの栄養状態
季節柄か、あるいはこの暑さのせいなのか、最近「足がつる」と訴える患者さんが多いようです。
もちろん、鍼やお灸をすることで、ほとんどの場合は改善します。
でもしばらくすると、「また最近つるようになっちゃいました」と言って来院する方が相当数います。
これってどういうことなのか分子栄養学的に考察してみましょう。
まず大前提として、足がつる原因は何かを考えてみます。
この3つがかなり有力です。
- 足の使い過ぎ
- ミネラル不足
- 冷え
私は趣味でフルマラソンを走ったりしていたのですが、よくゴール後に脚がメチャメチャつってツラい思いをしました。
そのとき、対策を調べてみて絞れたのが上の3つです。
そりゃぁ、42.195km(私の場合は時間にすると4時間くらい)走れば、脚は相当疲れます。
つまり使い過ぎです。
だとすると患者さんが足がつる理由として、「その日に買い物ですごくたくさん歩いた」などと言っていたら、この使い過ぎが原因かもしれません。
この場合は、ちょっと鍼やお灸をすれば大抵は楽になりますね(笑)
そういう場合には、「脚をたくさん使った日には、帰宅したらお風呂などにゆっくり入って疲れをとってあげてください」とアドバイスを加えればいいですね。
マグネシウムの不足の可能性を突きつめる
でも、マラソンで足がつる原因を調べるとよく出てくる他の理由に、ミネラル不足があります。
汗をたくさんかくランナーは、汗と一緒にミネラルが失われて、その結果として足がつるということです。
ミネラルの中でも特に大事なのが、マグネシウム。
じつは、カルシウムとマグネシウムは拮抗した働きをもっていて、カルシウムは筋肉や血管を緊張させ、マグネシウムは反対に緩めるんです。
ですから、カルシウムだけを摂り過ぎてもこのバランスが崩れやすくなりますし、もちろん何らかの理由でマグネシウムが不足すれば、筋肉は緊張して、つりやすい状態になります。
なぜ不足するのかについては、次の2つのパターンで考えます。
- 摂っていないので不足している場合
- 摂ってるけど不足している場合
摂ってないなら、もちろん摂ってもらいましょう(笑)
マグネシウムは魚介類、海藻類、穀類、ナッツ類などに多く含まれています。
もちろんサプリメントを使うのもひとつの方法ですけど、まずは食べ物から始めたいですね。
もう少しマグネシウムが不足する原因について深掘りしていきましょう。
摂っているのに不足する理由は?
マグネシウムなどのミネラルの場合、足りないから摂っもらうようにアドバイスすれば終わりかというと、それでは解決しない場合が多いんです。
それは何故か?
吸収が悪いからです。
摂っても吸収されなければ、カラダで使えませんね。
マグネシウムには種類がいろいろありますが、酸化マグネシウムなどは下剤として使われます。
理由は、吸収が悪いから。
だから下痢するんですね。
ということでちょっとまとめると、一般的にミネラルについては次の4つが重要です。
- そもそも摂っているのか?
- 吸収率はどうか?
- 拮抗するミネラルとのバランスはどうか?
- 消費量が多くないか?
1は上で書きました。
もちろん、摂ってもらうようにアドバイスするだけです。
摂ってるけど不足するのは、2の吸収率が低下しているか、4の消費量が増えているかのどちらかが原因です。
2の吸収率を上げるにはどうしたらいいでしょうか?
ポイントはそう、胃酸です!
マグネシウムはミネラルなので、吸収には胃酸が必要。
胃酸の出が悪いと、ミネラルをイオン化する力が落ちるので、吸収率が悪くなります。
対策としては、胃酸の出をよくするような食べ方を実践してもらいます。
これについては下の記事にまとめてありますので、是非参考にしてください。
それからマグネシウムは、皮膚からも吸収できます。
エプソムソルト(ソルトというけど実は硫酸マグネシウム)をお風呂に入れて入ると、皮膚から吸収されて不足を補えるしカラダがとっても温まります。
吸収が悪い人にはススメてみてください。
ところで、ALP(アルカリフォスファターゼ)という血液検査項目がありますが、これが下がるとマグネシウムや亜鉛が不足している可能性があるという、分子栄養学的な血液検査の読み方があります。
ちょっと血液検査結果を見せてもらって、チェックするといいかもしれません。
理想値としては63〜65くらいといわれていて、60以下だとちょっと低めのようです。
3についても上で書きましたね。
カルシウムだけをたくさん摂ると、カルマグバランスが崩れてマグネシウム不足の傾向になるので、注意が必要です。
その辺りについては、こちらの記事が参考になるので読んでください。
マグネシウムの消費量が増える理由と対処法
4の大量に失われる場合についても考えてみましょう。
可能性は2つ考えられます。
ひとつはたくさん出ていってしまっている場合。
考えられる原因のひとつは、大量の発汗。
基本的に、汗をたくさんかくと一緒にミネラルも失われます。
だから汗とともにマグネシウムがたくさん失われると、筋肉は緊張しやすくなるわけ。
つまり、つりやすくなるんですね。
それが証拠に、スタートからゴールまでずっと雨の中を走った2019年の東京マラソンでは、ゴール後に脚がつらなかったんです。
ちょっとビックリしましたが、そんな理由だったんですね。
臨床ではさらに、つった時間帯を確認しましょう。
睡眠中だったら、「寝汗をよくかきませんか?」と尋ねてみましょう。
もし「はい、結構かきます」という答えが返ってきたり、日中でも大量に汗をかいたときなどにつっているようなら、マグネシウム不足の疑いが強まります。
寝汗については、東洋医学的に弁証して治療するべきですね。
栄養学的には、夜間低血糖などを起こして睡眠の質が低下して汗をかいている可能性もあるので、そういった対策も必要になります。
もうひとつは、マグネシウムの消費量が増えている場合。
これに対しては、次の質問をしてみてください。
- 甘いものが好きか?
- アルコール類をよく飲むか?
- 激しい運動をよくするか?
- ストレスが強い環境にないか?
これらによってマグネシウムの消費が過剰になります。
せっかく摂れていても、ムダ使いが多ければ足りなくなるのは当たり前です。
マグネシウム不足が原因かもしれないとなったら、マグネシウムの消費量を増やす要因のなかで該当するものを控えてもらう必要がありますね。
甘いもの、アルコール、ストレス…。
なかなか難しいかもしれませんけど、心を鬼にしてアドバイスしましょう(笑)
同時に、マグネシウムを多く含む食品を積極的に摂ってもらいましょう。
普段からマグネシウム不足があるかどうかを確かめる
それから、もしかすると普段からマグネシウムが不足気味の可能性もあるので、次のような項目についても確認してみましょう。
- 肩こりがあるか?
- 疲れやすくないか?
- 便秘がちではないか?
- 血圧が高くないか?
- 喘息もちではないか?
これらの症状が2つ以上あれば、普段からマグネシウムが不足している可能性が高まります。
以上が大まかな流れです。
このような手順を踏むことで、
- マグネシウムが足りないのかどうか?
- 足りないとしたら原因は何か?
がわかります。
あとは原因に応じたアドバイスをすると、足がつらないように根本原因から治せるようになります。
食べていない人には「こういうマグネシウムが多く含まれている食材を積極的に摂ってください」と言います。
吸収が悪い人には「エプソムソルを入れてお風呂にゆっくり浸かってください」ですね。
もちろん、胃酸が出やすくなる食べ方もアドバイスしてあげてください。
消費が多いことで足りなくなっている人には、甘いもの、お酒、ストレスなどを減らすようにアドバイスしましょう。
そうそう、足がつる原因の3つめの「冷え」については、鍼灸がもっとも得意とするところですので、ご自分の得意な治療方法で対処してあげましょう!
なんといっても、「冷えは万病のもと」ですから。
ついでに、足がつる場合によく使われる漢方薬は「芍薬甘草湯」ですね。
市民ランナーたちの間でも、よく言われています。
今回のまとめ
今回は患者さんにキチンと食事や栄養の指導をするためには、どうしたらいいかを具体例をあげて説明しました。
ちょっと長くなったのでまとめてみると、こんな感じですね。
- 患者さんの症状や血液データからどんな栄養素が足りないのかを把握する
- 追加問診などでその栄養が足りない原因を見極める
- 栄養素などが足りなくなる原因は主に下記の3つ
・そもそも摂っていない
・吸収ができていない
・消費量が過剰になっている - 原因を根本的に解消するような食事や生活のアドバイスをする
これができるようになると、タイトルに書いたように鍼灸師が根拠をもって食事・栄養指導ができるようになります。
そのためには、「分子栄養学」を学んで臨床でドンドン使ってみることです。
まずは手始めに本を読んで学んでみましょう。
私がオススメする書籍をまとめた記事2つのリンクを貼っておきますので参考にしてみてくださいね。
かなり長い記事になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
今回はこの辺で。