野菜・果物ジュースは、野菜や果物の代わりになるのか?

東洋医学×分子栄養学

僕が診させていただいた栄養カウンセリングの患者さんで、野菜を摂る代わりに野菜ジュースを飲んでいるという方がいました。

1日分の野菜が摂れると謳われている200ml入りのパックが手軽に買えますよね。

「ビタミンだミネラルだと騒がなくても、それでいいじゃないか!」という声が聞こえてきそうです(笑)

そこで今回は、とりあえず次の2つの問題点に絞って考えてみます。

  • ジュースという形で野菜や果物を摂るのはありか?
  • 野菜と果物どっちがいいのか?

ジュースという形で野菜や果物を摂るのはありか?

まず濃縮還元ジュースについて。
野菜や果物のジュースというと、簡単に手に入るものはほとんどがこのタイプです。

このジュースの材料は、なるべく安く手に入るものを世界中から集めてくるんですよね。

それらの野菜を加熱して6分の1くらいまで濃縮して、ケチャップみたいなどろどろの濃縮ペーストにして、それを冷凍して日本に輸入するんです。
つまり体積が6分の1になるから、運賃も6分の1になるというわけ。

この濃縮ペーストに水を加えて元に戻したものを「濃縮還元」って呼ぶんです。
国内で戻せば「国内製造品」と表示していいことになっています(笑)

だけどこの方法だと高温減圧下で加工されることが多いので、香りはもちろんほとんどの栄養素が失われちゃいます。
食物繊維が入っているとかえって飲みにくくなるので、これもあらかじめ取り除くんです。

メーカーによってはここで、香料とかビタミンC、ミネラル、カルシウムなどの食品添加物を加えます。

この香料がまた問題で、化学的に合成された香料は3000以上あるらしいんですけど、それらを組み合わせて天然に近い香りを作るんです。

フルーツ飲料や野菜ジュース、缶コーヒー、お茶に至るまで、さまざまなドリンクに香料が使われていて、作れない香りはないとまで言われています。
ある意味で、日本が誇る技術ですね(笑)

香料は何をどれだけ使っても一括表示でいいことになってるので、「香料」って書いてある濃縮還元ジュースは買わないほうがいいかも…。

あと、砂糖を加えてる場合もあって、加糖が5%以下の場合は「100%果汁」と表記できることになっているので、ここも注意が必要です。

つまり、濃縮還元ジュースは安い以外のメリットはほとんどないと言えそうです。

一方、野菜や果物のジュースにはストレートジュースというのがあります。

こちらは、原料の野菜や果物を搾った果汁に基本的に何も加えないで最低限の殺菌をしてそのままジュースにして容器に詰め、低温で保存したものです。

加熱しないので味や香りがちゃんと残り、栄養素も失われにくいんですけど、瓶などに詰めたものを運ぶために輸送コストがかかって価格が高くなってしまうんですけど、こちらの方が健康的であることは間違いありません。

デメリットといえば、その年のできや搾った時期によってジュースの色や味が変化することくらいですかね。 自然のものだから仕方ないですね。

基本的にジュースの形だと血糖値が上がりやすいので、こういう摂り方はおススメできません
ただどうしても飲むとしたら、ストレートジュースですね。

野菜と果物どっちがいいのか?

次に、果物と野菜のどちらがいいかについて考えてみます。

果物の甘味は果糖(フルクトース)です。
これ前回に紹介した『肥満の科学』にも書いてありますけど、脂肪を蓄積するための材料になってます。

ヒトは冬眠しないし、わりと気軽に食べ物が手に入るので、非常用エネルギーとしての脂肪をガッチリ溜め込む必要はないですよね。

血糖値をあまり上げないというのは果糖の良い面ですけど、太るだけではなく脂肪肝にもなりやすいので、そうすると代謝全般が落ちるので、いろいろな意味で問題です。

以前は脂肪肝といえばアルコール性でしたが、いま僕が栄養指導している患者さんの中年以降の女性患者さんに多いのは、非アルコール性の脂肪肝です。

原因の多くは糖質過多
あまりに問題なので、次回のスキルアップセミナーで取り上げることにしました。

それ以外にも果糖のデメリットはあります。

果物といえばいろいろな栄養素やミネラル、食物繊維などが含まれていて、健康に良いイメージですよね。
特にビタミンCはその代表格です。

ですけど、糖分が多い状態だとビタミンCの吸収が阻害されるということが分かっています。
これは、グルコースと果糖で吸収経路が競合することが理由です。

皆さんはビタミンCの効果って美白くらいだと思っているかもしれませんが、じつはとっても大事な栄養素なんですよ。

それ以外にもまだ果糖のデメリットはあるんです。
それは果糖には抑制システムがほぼないことです。
つまり抑制が効かないわけ。

グルコースだと、たくさん摂ると血糖値が上昇して、インスリンが分泌され、結果的に血糖値は下がりますけど、果糖にはそういうシステムがないんですね。
困ったことです。

まだあります(笑)

スイーツなどに比べて、「果物は健康に良いから食べてもいいでしょ」という言い訳に使われやすい気がします。
果物だから大丈夫的な…。

果物の種類でいえば、バナナやメロンなどよりブルーベリーやイチゴの方が糖尿病のリスクが低いという報告もあるんですけど、「あまおう」とかではそれは成り立たない気がします。

もし食べるとしたら、品種改良で甘みを増していない旬の路地ものがいいでしょう。

話を元に戻して「野菜か果物か?」という点では、野菜といえそうですけど、そもそも植物性食品なら健康に良いと考えるのはちょっと禁物です。

その理由は、植物は自然の中で生き残っていくために、防御化学物質を生成するからです。
例を挙げると、レクチン、シュウ酸塩、フィチン酸、ゴイトロゲンなどです。

今回はこれについて細々とは書かないでおきますが、とにかく野菜ならカラダにいいと思うのも間違いですかね〜。

どんなものでも食べ過ぎて良いものなんてありません。
ではまた。

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