いつも読んでいただいてありがとうございます。
今回は、久しぶりの書籍紹介です。
『朝、起きられない病』(今西康次著、光文社新書)
「朝起きられない」「だるさや吐き気、頭痛で体が動かない」などという主訴を持つ起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)という病気があります。
これに対して分子栄養学的にアプローチするという内容の本です。
本書では、発達に必要な栄養や運動との関係、周囲の働きかけなどについて、症例を交えて解説しています。
起立性調節障害ってどんな病気?
この病気、軽症例を含めた推定患者数は約百万人で、中高生の1割を占めるともいわれていて、悩んでいる親子はかなり多いようです。
しかもそのうち4割は成人になっても改善しないといわれているので、子どもだけの問題ともいえないかもしれません。
原因は自律神経の不調と考えられています。
ですが、自律神経が不調になる原因は多岐にわたるので、画一的な治療法は特になく、休養や病気への理解、患者への共感という対応がメインになっているようです。
症状としては、立ちくらみやめまい、動悸、起立不耐症、朝起き不良、頭痛、腹痛、全身倦怠感、気分不良、乗り物酔い、気を失うなどです。
その他にも、無気力感、思考力の低下、記憶力の低下、成績の低下、イライラ、慢性疲労、寝つきが悪いといった症状が出ることがあります。
午後になるにつれて元気になるため、「怠けている」などと言われることもあるようですけど、決して怠け病ではないんですよね。
治療法も明確でなく、適切な対応がされないことで、不登校・引きこもりへの入り口にもなっているというのが現状なのだとか。
この自律神経の不調に対する栄養という切り口は意外な効果を持っていると、臨床を通して私も実感しています。
栄養との関係
実際に著者の今西先生が患者さんの栄養状態をチェックしてみると、鉄などのミネラルとタンパク質が極端に不足しているケースがほとんどで、特にこれらの栄養が必要な二次性徴期に起立性調節障害を起こしやすいそうです。
二次性徴期に質的栄養失調になる理由としてはいろいろ書かれていますが、いくつかピックアップしてみます。
- 必要な栄養が増える
この時期はカラダが急成長する時期ですから、必要となる栄養も増えるわけですね。
代表的なものは、タンパク質。
カラダをつくるもとになるものですから、当然です。
それ以外にも成長期に必要量が増えることで相対的に不足しがちなミネラルとしては、亜鉛があります。
ミネラルはいつも書いているように吸収が悪いので不足しがちな上に、特に需要が上がってしまうから大変です。
亜鉛が不足することで相対的に拮抗的にはたらく銅が過剰になって、イライラしやすくなったりもします。
これについては過去に書いた記事のリンクを貼っておくので、こちらも是非読んでみてください。
- 食への自由度が上がる
それまでは親から与えられたものを食べていたのが、この時期から自分で買ったり選んだりして食べるという自由度が増すんですね。
そうすると、肥満や痩せなどの栄養障害を招きやすくなります。
例えば、無理なダイエットをしたりとか、お菓子ばかり食べたりとか…。
そういう意味で、この頃までに食や栄養に対する基本的な考え方を子どもに教えておくことは、とても大切なことかもしれません。
うーん、「子どものための栄養教室」でも企画してみようかな(笑)
そして、本書で紹介されている患者に共通する栄養上の問題点としては、下記の4つがポイントになっています。
- タンパク質不足
これは上でも書きましたけど、成長期にもっとも大事なカラダをつくるもとになる栄養素です。
ただし、単純に量をたくさん摂ればいいというものではなくて、消化吸収のことも考えながら摂る必要があるのは、いつも書いているとおりです。
- ビタミンB群不足
ビタミンBには8種類もあるので、栄養学ではよくB群といいます。
お互いに協調してはたらくという性格もあって、一緒に摂るのがオススメです。
はたらきとしては、主に三大栄養素の補酵素として使われるので、カラダが成長している時期は当然のように需要が上がって不足します。
水溶性のビタミンなので、血中濃度を維持するためには頻回に摂る必要がありますし、腸内細菌の善玉菌がある程度つくってくれるので、腸内環境をよくしておくことも大事です。
- 鉄をはじめとしたミネラル不足
特に女子の場合は、生理によって失われる鉄が問題となりやすいです。
貧血症状が強い場合には、サプリなどで摂る必要もありますが、ここはすごく微妙な問題なので、専門家の指示を仰ぐことをオススメします。
上に書いた亜鉛も細胞分裂に必須だという理由などで、特に成長期に需要が上がる大事なミネラルですね。
- 糖質過剰
これが、もしかすると成長期にいちばん気をつけるべき問題かもしれません。
甘いジュースを常に飲んでいる子どもがすごく多い印象があって、とても心配です。
糖質の過剰摂取は血糖値の乱高下を招き、その結果としてメンタルが不安定になります。
ジュースを飲んで血糖値が上がっているときには気分が良くなるんですけど、その後すぐにインスリンの大量分泌の影響で急激に血糖値が下がるので、イライラしたり不安になったりしやすくなります。
個人的には、ADHDなどの問題とも関係があると思っています。
砂糖の問題点については、前回思いっきり書いたので(笑)、まだ読んでない方はこちらからどうぞ。
どうすれば治るのか?
最後に対処方法についてです。
まずは栄養状態をチェックすることが大事ですね。
本書に書かれている指標を参考までに載せておきます。
私の場合はもう少し細かいチェックのし方をするんですけど、これでも十分に使えると思います。
まずは、いちばん大事なタンパク質。
タンパク不足については血液データがかなりいろいろと参考になるのですが、本書では尿素窒素(BUN)を指標にしています。
これが1桁だとタンパク質不足と判断していて、高タンパク食を意識してもらうとBUNの上昇に伴って、朝の体調もどんどん改善していく、と書かれています。
次にビタミンB不足ですけど、これはAST(GOT)とALT(GPT)が指標になっています。
ビタミンB不足があるとALTが低下し、ASTがALTの2倍以上ある場合やどちらも1桁の場合などに、強いビタミンB不足と考えます。
足りない栄養がわかったら、それを補うわけです。
基本的に本書ではサプリで摂ることを推奨しています。
この辺は私の考え方とちょっと違うのですが、手っ取り早く症状を改善したければこれもありかもしれません。
そのためサプリの選び方についても細かく書かれているので、参考になるかもしれません。
ただし書かれているサプリの摂取量は結構多めなので、その点も少し注意が必要かもしれません。
まとめ
『朝、起きられない病』という本の内容の紹介を中心に起立性調節障害についてみてきました。
成長期のみならず、大人にも可能性のある病気ですね。
ポイントをピックアップして書きましたが、本書では具体的な改善方法やサプリの選び方、症例なども豊富に載っていて、分子栄養学の基本的な考え方を知る導入編として読んでみる価値があると思います。
是非とも実際に購入して読んでみてください。
今回はこの辺で。
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