いつも読んでいただいてありがとうございます。
女性にはスイーツ好きの人が多い印象ですけど、それには栄養学的な理由があるんじゃないかと思っています。
今回はその辺りを「風が吹けば桶屋が儲かる」風に掘り下げてみます(笑)
日本の女子には貧血が多い
日本の女性、特に閉経前の女性には鉄欠乏性貧血の人が多い(ほとんどの女性が貧血だという分子栄養学系のドクターもいるほど)といわれます。
患者さんを診ていても、隠れ貧血といわれる状態を含めると、ほぼ貧血な感じです。
その理由は大きく分けて2つ。
ひとつは、日本は食品に鉄を添加していないから。
いつも書いているように、欧米では小麦に鉄が添加されているので、基本的にパンやパスタを食べていれば鉄不足にはならないんです。
アジアの国でも、中国では醤油、ベトナムではナンプラーなどに鉄を添加しています。
これは国の政策なので、添加していない日本ではどうにもなりません。
ですけど、「だからサプリで鉄を補いましょう」という単純な問題ではないんです。
人体でいちばん多いミネラルである鉄は、すごく微妙に体内での出入りが調節されていて、じつはほとんどが再利用されているので、むやみに鉄を入れるとそのバランスが崩れ、鉄過剰という問題を生みがちです。
そういった細かいシステムは、わりと最近になってわかってきたという事情も絡んでいます。
鉄が不足するもうひとつの理由は、日本人は胃腸が弱い人が多いこと。
鉄はミネラルなので、胃酸の出が悪いとイオン化されないので、摂っても吸収がうまくできないんですね。
そんなわけで、日本の女子は鉄が不足している人が多いんです。
貧血だとどうなるのか?
鉄が足りないと貧血になります。 そして貧血の状態だと、こんな症状が出ます。
ちょっとチェックしてみてください。
まずは一般的な貧血の症状。
立ちくらみ、息切れ、めまい、ふらつき、動悸、疲労感、持久力低下、 顔面・眼瞼結膜の蒼白などです。
これらの自覚症状は、貧血が急速に進行すると強く出てきますし、ゆっくり進行すると弱くなります。
消化管出血とかが原因で貧血になる場合を除いて、基本的にゆっくりと進行することが多いと思われるので、そういう場合には全く症状がでないことも少なくないといわれています。
年齢でいうと、高齢者は若年者と比べて症状が強く出るとされています。
次は、「えっこれが貧血の症状なの?」的な症状。
精神症状としては、気分の浮き沈み、注意力の低下、イライラ感、神経過敏、抑うつ感などが出現します。
鉄不足によってうつになるのは有名ですね。
爪(特に利き手の親指の爪がフラットになります)や髪の毛(ツヤや太さ、抜け毛にも影響します)、皮膚のトラブルなどが起こりやすくなります。
鉄はコラーゲンをつくるのに必要だからですね。
血管のコラーゲンが足りなくなると、簡単に内出血しやすくなったり、歯茎から出血しやすくなったりします。
粘膜のトラブルも鉄不足でよく起こります。
具体的には口角炎、舌の痺れ・赤み、舌炎や粘膜の萎縮による嚥下障害(飲み込みが悪い)といった症状が出てきます。
それ以外には、風邪を引きやすい、冷え性、むくみ、湿疹、筋力の低下、不妊などが鉄不足によって起こりやすい症状です。
変わったところでは、異食症というのもあります。
日本人の場合だと、ほとんどが氷食症といって氷をガリガリ食べたくなるというものです。
レストレスレッグ症候群(足むずむず症候群)なども、鉄不足が原因だと考えられています。
どうですか?
こんな症状ありませんか?
貧血女子がスイーツを求めてしまう理由
次に、貧血だとどうしてスイーツが食べたくなるのかを説明しますね。
赤血球に含まれるヘモグロビン(というタンパク質)は、鉄を含んでいます。
ヘモグロビンは鉄イオンを利用して酸素と結合する性質があって、肺で取り込んだ酸素をカラダのすみずみへと運んでいます。
体内の鉄が不足すると、ヘモグロビンが合成できなくなります。
ヘモグロビンの合成が低下すると、カラダの各組織で酸素が足りなくなります。
カラダのいろいろな細胞の中ではエネルギー(ATP)をつくっているんですけど、2つのタイプのつくり方がありました。
ひとつは細胞質で行われる酸素が必要ない解糖系。
こちらは酸素は必要ないけどつくれるATPの数が少ないのが弱点です。
もうひとつがミトコンドリア内で行われる酸素が必要なTCA回路(クエン酸回路)と電子伝達系。
こちらはたくさんATPをつくれるけど、酸素がないと回路が回らないのが問題です。
ヘモグロビンが不足すると、酸素が足りないのでミトコンドリア内でエネルギーをつくるのが難しくなります。
するとエネルギー産生は低下しますね。
その結果として、酸素が必要ない解糖系で必死にエネルギーをつくろうとします。
解糖系の材料は、名前のとおり糖質です。
その結果、甘いものを求めるわけです。
貧血→ヘモグロビン低下→酸素不足→解糖系→スイーツです。
これが、貧血女子がスイーツを求めてしまう理由です。
そうそう、カカオは100gあたり14.0mgほどの鉄が含まれているので、貧血女子にチョコ好きが多いのも頷けますね。
スイーツがなぜ悪いのか?
ここからは、なぜスイーツが悪いのかについて書いていきます。
まず砂糖は腸内環境を乱します。
腸内環境が大切なことは折に触れて書いているので繰り返しませんが、この地球上でもっとも菌が密集している自分の腸のなかを良い状態に保つことは、健康のためにはすごく大事なことです。
特に腸内の悪玉菌が糖を好みますので、そういう意味でも良くないですね。
それから、砂糖は炎症を増長させます。
炎症、特に慢性的な炎症が生活習慣病の原因になっているという報告は、どんどん増えています。
これからの時代、健康のためにいかに慢性的な炎症をなくすかがポイントになりそうです。
さらに、砂糖は糖化を促進します。
糖化とは、食事によって摂り過ぎた余分な糖とタンパク質や脂質が、体熱によって異常な結びつき方(これを変性といいます)をする現象のことです。
体温による熱が関与していることから、「体がこげる」反応ともいわれています。
糖化が起こると細胞の老化が進み、肌の衰えやさまざまな体調不良、さらには病気の温床にもなります。
どうせなのでもっと書いてしまいます。
スイーツには砂糖だけでなく、油も結構使われています。
そしてここに使われている油はほとんどが、カラダに悪い、控えたほうがいい種類の油だと考えていいでしょう。
先ほどの炎症ということを考えるときにも、悪い油はこれを増長させるので控えたいところです。
そして糖と油が合わさると、これがけっこう美味しいんですよね。
ですけど油だけならそうそう脂肪にならないですけど、糖+油は脂肪になります。
太ります。
突然ですが、脂肪肝というと以前はアルコールが原因と考えられていましたが、いまは糖質過多によるものが多くなっています。
つまり、スイーツの食べ過ぎで脂肪肝にもなるんです。
やっぱり、できるだけ取りすぎないようにしたいものですね。
スイーツ好きを卒業するためにすべきこと
さて、さいごに対策です。
このブログで、ただ「止めろ」といっても無理だということはご理解いただけたと思います。
そこで対策としては、根本原因にアプローチしなくてはなりません。
今回は、「スイーツ好きは貧血が主な原因だ」ということで話を進めてきましたので、貧血を治すことが根本的なアプローチということになります。
それのためにやるべきことは2つ。
ひとつは、鉄分の多い食品を積極的に摂ること。
もうひとつは、胃腸の弱さを補う食べ方をすること。
胃酸の出を良くする食べ方については、以前にも何度も書いているのでここでは省いてリンクだけ貼っておきますね。
鉄分の多い食品について、少しだけ。
よく動物性のヘム鉄が吸収が良いので、こちらを積極的に摂るべきだといわれますが、じつはひどい貧血のときには非ヘム鉄の方が吸収されるという報告もあるんです。
ですから、動物性だけでなく植物性の食品からも鉄を摂るようにしましょう。
基本的に赤みが強い肉や魚には鉄が多く含まれていると思っていいです。
面白いのは、鉄を摂るならこれといわれるレバーには、ヘム鉄も非ヘム鉄も結構含まれていて、割合としては非ヘム鉄の方が多いんですよ。
また鉄はビタミンCやタンパク質と一緒に摂ることで吸収率が上がるので、そのあたりも気にかけながらあくまでも食べ物で摂るようにしましょう。
今回はこの辺で。