いつも読んでいただいてありがとうございます。
鍼灸っていろんなことに効きますよね。
それは治療している側の自分が驚くほどです。
でも、たかが肩こりなのになかなか取れなかったり、取れてもまたすぐに凝ったりする患者さんがいたりします。
皆さんはそんなことありませんか?
今回は、それってもしかするとこんな理由かも、というお話です。
皆さんの臨床の参考になれば嬉しいです。
それって交感神経の緊張が理由かも?
答えは、それってもしかすると栄養状態による交感神経の緊張が原因かもしれません。
ここから少し、交感神経の緊張によって肩が凝る理由をみていきます。
自律神経、つまり交感神経と副交感神経のバランスが大事なことは、鍼灸師の皆さんはよくわかっていると思います。
それぞれ交感神経が優位になると緊張し、副交感神経が優位になるとリラックスするんでした。
交感神経は、fight or flight、つまり「戦うか逃げるか」のときに優位になります。
クマさんと森で出会ったら、戦うってクマさんを倒すか、クマさんの追求から逃げきるかするしかありません。
そのときの状況は、身体が緊張して、呼吸が浅く早くなり、心臓は速く打ち、血管は収縮して血圧が上がり、そして筋肉は緊張します。
交感神経は、fight or flight or freeze といわれることもあります。
このfreeze=固まる、ですね。
ですから交感神経が優位になると、筋肉は緊張して、固まって、凝るんですね。
では次に、なぜ交感神経が優位になるのかについても、考えてみましょう。
どうして交感神経優位になるのか?
まず、何といってもストレス(肉体的・精神的の両方とも)で交感神経が優位になります。
上の例でいうと、森でクマさんに出会ったことがとても大きなストレスですね。
同じように、人間関係のイザコザなどの精神的な問題もストレスになる場合がありますし、肉体的には過労や激しい運動などもストレスです。
でも栄養学的にみると、交感神経が優位になるすごく大きい原因のひとつは「低血糖」です。
低血糖? なにそれって思うかもしれません。
学生時代にキチンと勉強した人でも、低血糖を起こしている人がそこそこいるという認識はないかもしれません。
低血糖なんて、糖尿病の患者さんが薬やインスリンが効きすぎて、冷や汗、動悸、意識障害、けいれん、手足の震えなどの症状があらわれものと思っているのが普通かもしれませんね。
ところが、分子栄養学の大家で『脳に効く栄養』という本を書いたマイケル・レッサー先生は、「すべての不調は低血糖の海に浮いている」といって、多くの病気のベースに低血糖があるとまで指摘しています。
低血糖を起こしてから肩がこるまでは、だいたい次のような経緯になります。
低血糖 → 間脳の視床下部 → 交感神経優位 → アドレナリンの分泌 → 血糖値上昇
正確にはアドレナリンが分泌されると、肝臓に溜めてあったグリコーゲンが分解されてグルコースがつくられて、それによって血糖値が上昇するんでしたね。
低血糖状態は命に関わる状態ですから、神経系やホルモン系のいろんな手段で上昇させるようにカラダが働くんです。
いろいろある系統のうち、最初に働くのは交感神経→アドレナリンだといわれています。
もちろん肩がこる理由は、他にもたくさんあります。
今回は詳しく書きませんが、少し挙げておくと、そもそも仕事のしすぎとか、姿勢が悪いとか、血行が悪い、マグネシウム不足などでも筋肉が緊張しますので、よく原因を見極めることが大事ですね。
低血糖ってどんな状態?
では話を戻して、低血糖とはどういう状態をいうのでしょう?
主な症状は以下のとおりです。
- お腹が空いておやつを食べることが多い
- 食後に眠気が襲ってくる
- 痩せ型で筋肉が少ない
そして次ような症状が夕方に出ることはありませんか?
- 強い眠気を感じたり、集中力が落ちる
- 手先が震えることがある
- 頭痛がする
こういう症状があったら、もしかすると低血糖を起こしているかもしれません。
でも1日の中で最も長く食事を取れない時間、つまり寝ている間に特に低血糖症状が出やすいんです。
そしてこの夜間低血糖によって、睡眠の質が極端に落ちます。
あなたは、睡眠中や起床後にこんな症状があったりしませんか?
- 夜中に何度も起きる
- 寝汗をかくことが多い
- くいしばりや歯ぎしりが多い
- 嫌な夢をよく見る
- 朝起きたときに疲れが取れていない
睡眠時間は、身体を修復するための成長ホルモン(年齢に関係なく分泌されます)が出たり、脳を休めたりするためにとても大切な時間です。
ところが低血糖という非常事態が起こると、何をおいても血糖値を上げなければならなくなって、アドレナリンが分泌され、交感神経優位の状態がつくられます。
これって、もっともリラックスすべき睡眠中に「戦うか逃げるか」状態になるわけですよ。
だから、食いしばりも寝汗も嫌な夢も頸肩がこるのも当然です。
朝目覚めたときには疲労困憊していて、とても元気に起き上がって1日をスタートする状態ではないのは一目瞭然ですね。
だから朝、ベッドから起き上がれないんです。
こんな状態を続けていたら、カラダは悲鳴をあげてしまいます。
低血糖対策は?
この対策としては、いくつかやるべきことがあります。
まずは欠食しないこと。
少しずつでいいので、3食きちんと食べましょう。
つぎに補食(おやつですね)を摂りましょう。
食事と食事の間で低血糖状態に陥りがちな人は、10時や3時に補食を摂るようにしましょう。
補食は血糖値が急上昇しないものが良いですね。
甘いジュースや砂糖、悪い油を使ったスイーツはもっての外です。
さつまいも(干し芋などもOK)や小さいおにぎり、甘栗などを少しずつゆっくり食べて、来るべき低血糖を事前に予防します。
夜間低血糖を防ぐために、夜の食事は血糖値を上げやすいものはできるだけ避けて、就寝前に少しMCTオイルなどを摂るといいかもしれません。
MCTオイルはとても効果的なエネルギー補給になるんですけど、空腹時に摂ると胃腸障害(胸焼けや下痢など)を起こしがちなので、くれぐれも少しずつ(小さじ半分くらいから)増量していくように注意してください。
このほかに、カラダを動かすことは交感神経の調節機能を活性化するといわれています。
だって交感神経優位の状態って、カラダを動かす(戦うか逃げるか)の準備状態ですよね。
それなのに机に座ったまま仕事をしていれば、解消するわけないじゃないですか。
ストレス発散には、(軽めでいいので)運動が大事です。
今回はこの辺りで。
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