質的な栄養失調状態にあることが多い現代人が栄養療法を行うためには、いくつかの大前提があります。
前回はそのうちのひとつで、栄養素が「カラダに入らない」ことについて書きました。
要点を簡単にまとめると、下記のような感じでした。
- 栄養素がカラダに入るためには消化吸収が大事
- 消化器系は自律神経のうち副交感神経が支配している
- 消化酵素が出ないとか胃腸の動きが悪い原因としては、ストレスによる交感神経緊張状態の場合が多い
2回目の今回は、カラダに入らない理由のひとつである「ストレス」について考えていきます。
「ストレス解消」って言葉をよく聞きますけど、結局どうすればストレスを解消できるのかについても書きます。
ストレスってなに?
前回の続きで説明すると「森の中でクマさんに出会う」、これがストレスですね。
そうするとカラダはいろいろな反応をしますが、一言でいうと「闘うか逃げるための準備をする」わけです。
そのときにカラダで起こっていることを見てみましょう。
闘ったり逃げたりするためには、クマさんの動きをよく観察したり周りの状況をキチンと把握する必要があるので、目は大きく見開きます(瞳孔が散大する)。
クマさんから逃げたり闘ったりするためにはたくさんエネルギーが必要になるので、心臓はバクバク拍動してカラダ中に血液をバンバン送り出します。
エネルギーをつくるためには酸素や糖質が必要になります。
酸素をたくさん取り込むために、気道は広がります。
血糖値を上げるために、膵臓ではグルカゴンというホルモンが分泌されますし、肝臓ではグリコーゲンの分解が促進されます。
足や手がスベるとクマさんから逃げるときに滑って転んでしまったりして困るので、掌や足の裏に汗をかきます。
もちろん逃げたり闘ったりする間に食べたものを消化している余裕なんてないので、消化器系の動きは止まり、消化酵素の分泌も抑制されます。
逃げているときにトイレに行く暇ももちろんないので、排泄機能は抑えられます。
これらがストレスを受けたときに起こるカラダの反応です。 結構凄いことになってますよね。
ストレスがかかり続けるってことは、ずっとこういう状態のままってことなんですよ。
どうすれば解消できるの?
こんな状態がずっと続いていたら、これはこれでカラダ的にとっても困ってしまいますね。
それではどうしたら「ストレスを解消する」ことができるんでしょうか?
クマさんとの関係を考えてみれば、これってじつに簡単なことです!
「クマさんに勝利するか、クマさんから逃げ切る」ことができればいいわけです。
これって一言でいうと「運動」ですよね。
そうなんです!
ストレスを解消するには運動をすればいいんです。
なぜって、ストレスがかかったときにカラダに起こる反応は、すべて運動するのに適したものだからです。
ところが現代社会ではストレスを解消するための運動をする機会がほとんどないですよね。
つまりここが問題なんです。
クマさんの代わりは、嫌な上司だったり、同僚からの陰湿なイジメだったり、家族関係だったり、お金の問題だったりします。
そんなことに耐えながら、会社ではほとんどの時間パソコンの前に座って仕事をしています。
動かしているのは指先と目くらいですかね。
ストレスを感じて、カラダがセッセとそのための準備をしても、闘うことも逃げることもできない環境ってことですね。
だからストレスが解消できずにドンドン溜まってしまうんです。
とにかく、運動をしましょう!
そうすれば、ストレスに対抗してカラダが準備した状態を解消できるんですから。
運動をしなさすぎる現代人
上でも書いたように、現代人のほとんどが一日中座った状態で仕事をしています。
特に日本人は先進国のなかでも座っている時間が長いことがわかっています。
オーストラリアの研究機関の調査で、日本人の成人が平日に座っている時間が世界20カ国中もっとも長い1日420分=7時間だということがわかりました。
18~65歳の成人49,493人を対象にした研究のデータです。
ちなみにもっとも座っている時間が短いのはポルトガルで、150分=2時間30分です。
1日の座位時間が11時間以上の人は、4時間未満の人に比べて、死亡リスクが40%も高まるという別の研究報告もあります。
座っている時間が同じでも、途中で立ち上がるなど座ることを中断する回数が少ないと、代謝疾患のリスクが増加するともいわれています。
可能なら立ち机にしたり、ときどき立ち上がってブラブラしましょう。
オーストラリアの小学校では、授業を座って受けても立って受けてもいいように高さを変えられる机を導入したところ、生徒たちの集中力が高まったという報告もあります。
ストレスをたくさん受けても、カラダを動かしていれば解消されるのに、座っているだけではダメなんですね。
会社でストレスを感じてすぐに、トレーニングウエアに着替えてジムに行くわけにはいかないでしょうけど(笑)、仕事帰りに例えば一駅分歩くなどして、カラダを動かすことでストレスを解消しやすい環境をつくることはできそうですね。
この場合の運動は、少し息の上がる程度のウォーキングや軽めのジョギングなどで構わないと思います。
是非とも今日から生活のなかに運動を取り入れて習慣化しましょう!
今回はこの辺りで。