いつも読んでいただいてありがとうございます。
現代人が質的な栄養失調状態にあること、だから不足している栄養素を摂ることでさまざまな不調が改善すること、これは確かな事実です。
実際に僕の患者さんでも、栄養の不足がどこからきているのかを見つけてそれに対処すると良くなる方が多いですから。
ですけど、栄養療法を行うためにはいくつかの大前提があります。
このことは治療者側だけが知っていればいいことではなく、患者さんにも理解してもらう必要があることだと思うんです。
今回から何回か続けて、そのことについて考えていきたいと思います。
栄養素がカラダに入ること
大前提、その1。
栄養がカラダに入ること。
ちょっと考えてみればわかることですが、栄養を身体に取り込むことができないと効果を出すことはできません。
どんなにたくさんサプリメントを取っても、その栄養素がカラダに入っていかなければ意味がありませんよね。
では栄養が入らないってどういうことでしょう?
まず、食べていなければ栄養は不足します。
これって簡単なことですけれど、実際には意外にできていないことなんですね。
そもそも「バランスの良い食事」って、具体的にどんな食事だかわかりますか?
大事なバランスといえばPFCバランスですね。
PはProteinでタンパク質、FはFatで脂質、CはCarbohydrateで炭水化物(糖質)、つまり三大栄養素のバランスのことです。
普通に考えて、このバランスが誰でも全員同じなわけはないですよね。
タンパク質の絶対量が全然足りていないお年寄りもいれば、「油は太る」と思い込んでいて摂らないようにしている若い女性もいれば、炭水化物しか摂っていないんじゃないかと思えるような育ち盛りの子供もいます。
そういう意味では、「バランスの良い食事を摂ってください」というひと言がいかに無責任かが分かります。
バランスをいうなら、まずはその人がどんな理由でどの栄養素が足りないのかを見つけて、必要な栄養素を食べてもらうようにアドバイスしなければいけないんです。
もちろん、どんな栄養素が足りていないのかは、症状や四診、血液検査データなどを見てみればかなりの部分わかるようになります。
消化・吸収が悪いこと
いつも書いているように、じつは問題なのは食べているのにカラダに吸収されていない場合です。
つまり、消化・吸収が悪いということ。
これは非常に多いですし、とても問題です。
食べているのに消化できていないというのは、消化酵素が出ていなかったり、胃腸の動きが悪かったりする場合のことです。
よく「カラダは食べたものでできている」と言われますが、正確には「カラダは消化できたものでできている」んです。
では消化酵素が出ないとか、胃腸の動きが悪い原因は何でしょうか?
もっとも問題だと思うのは、ストレスです。
もう少し詳しく言えば、自律神経のバランスが悪い状態のこと。
さらに言うと、多いのは交感神経が緊張状態になっていて、つまり頑張り過ぎている状態が続いていることです。
消化器系は副交感神経支配
食べたものを消化する消化器系の臓器というのは、副交感神経(迷走神経)が支配していますね。
だから、交感神経が緊張している状態ではうまく働かないんです。
もちろん消化酵素も出にくくなります。
交感神経というのは、別名「闘争と逃走の神経」」といわれるように、森の中でクマさんに出会ったときに「クマさんと闘うか、ダッシュで逃げるか」のときに働く神経です。
「クマさんと友達になる」という選択肢は、ちょっと置いておきましょう(笑)
この交感神経モードになっていたら、悠長に消化や吸収をしている場合でないのはわかりますよね。
だから消化器系を働かせる副交感神経系は働かなくなるんです。
食事はなるべく楽しい雰囲気で、好きな人と、ゆったり摂るのがいいというのは、そういう理由からです。
つまり副交感神経が優位になるような状態で食事をすると、胃腸の動きも良くなるし、消化酵素も出やすくなります。
逆に、夫婦喧嘩をしながらとか、嫌な事件のニュースを見ながらとか、腹の立つ番組をテレビで見ながらとかで食事をしてはいけません。
何かをしながらではなく、食事自体を愛する人と一緒に楽しむ時間にしましょう。
ただ「バランスの良い食事をしてください」というよりは、「楽しい雰囲気でゆっくり食事してください」という方が、患者さんのためになるかもしれませんね。
もともと日本人は胃酸の出が悪いし、他の消化酵素も出にくい体質のようです。
ですから余計に、食事を摂るときの環境に気をつけなければいけないわけです。
そうはいっても、なかなか緊張が取れないタイプの人も結構います。
そういう人は、普段から鍼灸やマッサージでリラックスできるようなカラダにしておくことも大切ですね。
次回はこのストレスについて、もう少し深掘っていきたいと思います。
今回はこの辺りで。