いつも読んでいただいてありがとうございます。
我が家は紫陽花で有名な北鎌倉の明月院に向かう道沿いにあるのですが、咲いてきましたねぇ。
明月院ブルーといわれる青一色の紫陽花はそれは見事ですよ。
この時期になると家の前の小川にホタルも現れて、夜の散歩に彩りを添えてくれます。
四季の移り変わりって、良いものですね。
六不治
ところで先日「東洋医学×分子栄養学」について、ある鍼灸院の院内研修会でお話しさせてもらいました。
その中でちょこっと紹介した「六不治」。
鍼灸師だったら聞いたことがあるかもしれません。
司馬遷の『史記』倉公扁鵲列伝のうち扁鵲の段にある有名なやつです。
一般的には、「治らない6つのケース」とされています。
このうちの3つめを紹介しました。
短めなので、全文挙げておきましょう。
病有六不治(病に六不治あり) 驕恣不論於理一不治也(驕恣し、理を論ぜざる、一不治なり) 輕身重財二不治也(身を軽んじ、財を重んずる、二不治なり) 衣食不能適三不治也(衣食適うこと能わざる、三不治なり) 陰陽并、藏氣不定四不治也(陰陽併し、蔵気定まらざる、四不治なり) 形羸不能服藥五不治也(形羸し、薬を服すること能わざる、五不治なり) 信巫不信醫六不治也(巫を信じ、医を信ぜざる、六不治なり) 有此一者則重難治也(此の一つ有る者は、則ち重し、治し難きなり)
この「不治」について、父と繋がりがあった宮川浩也先生の解釈はちょっと違います。
「治らない」ではなく「治療しない」。
治らないなら「不愈」や「不已」となるはずで、「不治」と書いてあるから扁鵲先生が治療しないケースという意味だと。
とても納得しました。さすが宮川先生です。
この解釈が書いてあるブログ「六不治」(鶯谷書院)のリンクを貼らせていただきますので、興味のある方は読ませてもらってください。
それぞれのケースについて
名医扁鵲が治療しないとした6つのケースを簡単にみてみましょう。
一つめは、驕りたかぶって、身勝手で、道理を理解しようとしない人。
こんな人でも治療すれば治るかもしれないですけど、治療したくないですし、したらしたでトラブルが起こりそうですね。
二つめは、身体よりお金が大事な人。
これもあまり治療したいとは思えませんね。
自分の身体にキチンと向き合っている人には頑張って治療したいですし、治ってほしいですね。
三つめは、着るものや食べることに節度がない人。
研修会ではこれを紹介したんですけど、食に節度がない人は治療をしても無駄になりそうですよね。
治療をするなら、しっかりと食の大切さを理解して、実践してほしいです。
四つめは、陰と陽が相争って臓の気が定まらない人。
これは治療するのが難しいってことですね。
当時は基本的に偉い人を治療していたはずで、治せないと自分の命が危険にさらされる可能性もあったので、治せそうもない場合は治療しないというスタンスだったみたいです。
いまだったら、難しいってことを患者さんに伝えた上で、それでもということなら自分なりの努力はするべきかと思います。
五つめは、身体が痩せて薬(もちろん漢方薬)を飲めない人。
これも治せないからという意味で、治療しないんでしょうね。
僕も以前にこういう患者さんを一度だけ診させてもらったことがあります。
いまから20年くらい前の話ですが、医師と一緒に在宅鍼灸をやっていたときのことです。
その方は30代前半の女性で、拒食症でした。
ほとんど骨と皮しかない身体で全身の痛みを訴えていて、薬は飲んでも便にそのまま出てきちゃうんです。
1年間毎週治療に伺って、なんとか自転車に乗れるくらいまで回復されたのを覚えています。
いまなら、分子栄養学も使ってもっと早く良くしてあげられたのになぁって思います。
最後の六つ目は、お祓いみたいなものを信じていて医者を信じない人。
さすがに鍼灸や分子栄養学を信じてもらえないと、一緒に良い方向を目指すことはできませんね。
扁鵲さんは、これらがひとつでもあれば、自分には荷が重いので治療しないといっています。
栄養アドバイスについて考えたこと
僕が考えたことを少し書きます。
治療という行為は、治療する側に丸投げするべきものではないですよね。
治療する側とされる側が一緒に協力して成し遂げるべきものじゃないでしょうか。
そのために、方向性をキチンと示して、それを理解してもらった上で、一緒に良い方向を目指して頑張るというのが僕が考えている治療です。
保険制度が整っているので、「病気になったら病院に行って薬をもらって飲めばいい」と思っている人も多いような気がします。
でも「なってから治す」のではなく、「ならないように普段から気をつける」ことが大事ですよね。
そのためにできることは、食事や栄養のアドバイスだと思っています。
そういうときに思うのは、ご本人が食事や栄養の大切さを理解し、納得していないと始まらないということ。
ここ、本当に大事です。
だから「着るものや食事が適切でない人」は、治療できないし治らないんですね。
鍼灸の先生方で、もし患者さんに栄養指導をしたいと考えているなら、まずやるべきは「食事の大切さ」を患者さんに理解・納得してもらうことです。
そのための話し方の練習や話の内容の検討をすべきだと思います。
このブログが、少しでもその助けになってくれると良いんですけど…。
今回はこの辺りで。