最近はサプリを飲んでいる人も結構いると思うんですけど、それって本当に効いてますか?
実際に患者さんに聞いてみても、効いてる実感がないという人が多いみたいです。
せっかく健康のためにと思ってせっせと摂っているのに、これじゃもったいないですね。
ということで、今日はサプリを飲んでも効かない理由について書きます。
栄養素の基本は欠乏症の予防
栄養素、特にビタミンは不足するとさまざまな欠乏症を起こすことがわかり、病気の予防に用いられるようになった、というのがいままでの基本的なビタミンの歴史です。
代表的な欠乏症は、ビタミンB1の脚気、ビタミンB3(ナイアシン)のペラグラ、ビタミンCの壊血病、ビタミンDのくる病などですね。
これは学校で習った記憶があると思います。
そして、ビタミンを摂る理由は欠乏症の予防目的以外にはなく、少量で十分であって、不足している場合にのみ必要になると考えられてきました。
これって医学界の常識ですね。
普通のお医者さんはこう考えているものと思っていいです。
友人の医師に聞いても、「僕たち医者は、栄養についてはほとんど学んでいないので」と言っていましたし…。
ビタミンの欠乏症はまったくないわけじゃないです。
前回書いたプチ壊血病みたいなのはよく見かけますし、お年寄りの女性に多いすごいO脚はプチくる病じゃないかと考えています。
ただ、ビタミン欠乏症は、基本的に足りない栄養を少し摂れば予防や改善ができますが、分子栄養学が問題にしているのは、単純な欠乏症ではないんです。
前に書いたヤギが体内でつくっているビタミンCの量が健康時の約6〜7倍に増えるというアレです。
これって、病気を治すにはそれだけ多くのビタミンCが必要になるってことですね。
つまり問題になるのは、使う量。
分子栄養学の祖、ライナス・ポーリング先生も
分子を正常化するために、不足している栄養素を至適量供給することによって、自然治癒力を高め、病態改善が得られる。
と言っていました。
不足を補うくらいの量では決定的に足りないし、それでは病気は治せないということです。
そして、この量しか入っていないのがコンビニとかで買える「マルチビタミン」です。
安いけど、それなりの量しか入っていません。
だから、効かないわけ。
至適量という考え方
僕は、分子栄養学を学ぼうと思ったときに、関係する本を読みまくりました。
いまの時点では、関連書籍も含めて230冊を超えています。
その経験をもとに、独学するのに必要な本はこちらの2つのブログにまとめました。
これらの本のなかで、僕が分子栄養学を学ぼうと思ったキッカケになった本のひとつが、エイブラハム・ホッファー先生の『統合失調症を治す』です。(すいませんが、上の25冊には含めていません 笑)
ホッファー先生は、統合失調患者を約6,000人も栄養療法だけで社会復帰させた1950年代のカナダの精神科医です。
使ったのはナイアシンとビタミンCが中心。
統合失調症の人は、ナイアシン(ビタミンB3)のレセプターが、病気ではない人に比べて10分の1しかなかった、という研究報告や、統合失調症患者はナイアシン要求量が高い、というデータもあります。
ホッファー先生が使ったナイアシン量はとても多くて、平均的には3〜6g /日だったようです。
参考までに日本人の食事摂取基準の推奨量は、下のような数値です。
- 18~49歳男性:15㎎NE
- 50~74歳男性:14㎎NE
- 18~29歳女性:11㎎NE
- 30~49歳女性:12㎎NE
- 50~74歳女性:11㎎NE
なんと推奨量の約200〜400倍にもなります。
ナイアシンは水溶性ビタミンB群の一つで、ニコチン酸とニコチンアミドの総称。
アミノ酸のひとつであるトリプトファンを材料に体内でも合成されるため、トリプトファン含有量を考慮してナイアシン当量という形で表します。
トリプトファン60㎎がナイアシン1㎎に相当するので、ナイアシン当量(㎎NE)は、下記の式で表します。
ナイアシン当量(㎎NE)=ナイアシン(㎎)+1/60 トリプトファン(㎎)
日本で売っているマルチビタミンのナイアシン含有量は10〜50mg程度です。
一方で、アメリカのメーカーのビタミンB3の含有量を調べてみると、ふつうに500mgとかになっています。
つまり使う方針や基本的な量が違うってことですね。
ビタミンCについても同様
前々回書いた風邪予防のためのビタミンCの日本の推奨量は、100mg/日でした。
これは厚生労働省の『日本人の食事摂取基準』に書いてあります。
5年ごとに改定されるので、最新は2020年版です。
厚労省のホームページからPDF形式でダウンロードできますし、書籍としても解説付きの本が出版されています。
普通、ビタミンCの1カプセルが1000mgなので、推奨量はその10分の1ですね。
確かに100mg/日摂れば壊血病にはならないかもしれないけど、風邪は治せないし、副腎疲労にも効果が期待できません。
ここからも分子栄養学で実際に使う量は、かなり多いことがわかると思います。
そして量を増やすと欠乏症以外にいろいろと治せるわけです。
ただし、どんなビタミン・ミネラルでもとにかくたくさん摂れば良いというわけじゃありません。
栄養素の種類によってそれぞれ量的な違いがあるんです。
ここでは一般的なことだけ書いておきますが、水溶性のビタミンはかなりの量でも多すぎれば基本的に尿からでちゃうのであまり心配いりません。
脂溶性ビタミンは最近ではホルモン的な効果を発揮するとまでいわれていて、量が多すぎると副作用がでますし、脂質と一緒に吸収されるので吸収には胆汁が必要となることも覚えておく必要があります。
ミネラル類も摂りすぎると確実に副作用がでるのと、特定のミネラル同士のバランスがとても重要です。
というわけで、日本のコンビニとかで売っているサプリは、ほとんどが圧倒的に容量が少ないことが多いのと、個別の問題に対応できていないので、効いた感じがしないってことです。
先ほども書いたライナス・ポーリングが言っていた「分子を正常化するために不足している栄養素を至適量供給する」がとても大事なんですね。
栄養素の投与量と得られる反応の間には深い関係があって、これを「ドーズレスポンス」といいます。
その人の消化吸収能力や栄養素が不足している理由、不足している栄養素の種類などによって、摂取量を適宜変えることも大事なんです。
栄養素の量は、個別性とドーズレスポンスがポイント、という話でした。
今日はこの辺で。