ズバリ整形外科疾患に必須な栄養とは?

東洋医学×分子栄養学

いつも読んでいただき、ありがとうございます。
今回も鍼灸師の皆さんへ向けて書きます。

鍼灸臨床といえば、腰痛、膝痛、肩こりなどの整形外科疾患が多いですね。
今日は、これに対する栄養学的なアプローチについて書いてみます。
これは、患者さんへの栄養アドバイスとして使えるはずです。

最初に結論を書きます。
整形外科疾患にもっとも大事な栄養素は、タンパク質です。

あくまでも三大栄養素が基本

ところで、よく話してみると結構サプリメントを摂っている患者さんって多いことがわかります。
ヒアルロン酸とか、コンドロイチン、クロレラあたりが多くて、サメエキスなど不思議なものを日々摂っている方もいます。

患者さんの栄養指導をする前に、まずその辺りを徹底的に聞き出してみましょう!
服薬状況については尋ねる前提になっていると思うのですが、サプリについては意外に聞いている鍼灸師は少ないように思います。

でも、栄養素って大事ですから、それを適当に摂っているとカラダに悪影響があることも多いんです。 サプリをつくるのにどうしても必要になる添加物などもあるので、たくさん摂ってしまうとそこから肝臓などの問題を生じる場合もあります。

いずれにしても、個々の状況をキチンと把握して、それに関わる根本原因に対処するというのが基本の流れです。

「○○のサプリが××に効く」などという単純なものでないことくらいは、鍼灸師の皆さんならよく知ってますよね。

栄養学的にいえば、サプリの前にやるべきことがあります。
ビタミンやミネラルを気にする前に、三大栄養素をキチンと摂るべきだということです。

朝からサプリを山盛り摂って、「私は栄養たっぷり」とか思っている患者さんは結構います。
でもそれじゃ、お話になりません。

そうそう、三大栄養素のうちタンパク質と脂質には必須がありますね。
必須アミノ酸、必須脂肪酸です。
だから、この2つは特に大事です。

まぁこの場合の「必須」は、カラダに滅茶苦茶必要ですっていう意味ではなくて、ヒトの体内では作れないという意味に取るべきですけど…。

逆にいうと、非必須だから摂らなくていいという意味ではないということですね。
準必須アミノ酸とされているグルタミンなどは、本当に摂るべきものです!

それから、糖質は摂らなくてもいいというわけではないんですけど、これはエネルギーにしかならないので、(もちろん大事だけど)後回しでもいいかな、くらいな感じです。
エネルギーはもちろん大切ですけどね。

整形外科疾患に必要な栄養素はまずタンパク質

話がいろいろと外れまくりましたが(笑)、 前置きは終わりにしていよいよ本題に入ります!

整形外科疾患に必要な栄養素はまずタンパク質
とにかくこれがいちばん大事!

骨や関節の問題がある人には、コラーゲンやケラチンなども必要になります。
そしてコラーゲンの材料は、タンパク質、鉄、ビタミンCです。

このうちいちばん大事なタンパク質について少し深掘っていきましょう。

タンパク質が不足する原因として、つぎの3つのパターンが考えられます。

  1. 摂っていない
  2. 摂ってるけど吸収できていない
  3. 消費量が多い

この3つのパターンで、どうして不足するのかをさらに考える必要があります。
それぞれについて、詳しく説明していきましょう!

タンパク質を摂っていない場合

まずは1番目の「摂っていない」場合について。

こういうときは、患者さんにその栄養を摂ってもらいましょう。
簡単ですね(笑)

いや、じつは問題はそんなに単純じゃないんです。
なぜ摂っていないのかをよく考えなければいけません。

理由はいろいろ考えられます。

  • 嫌いだから
  • 面倒だから
  • 摂ると胃もたれするから

とりあえずこんな感じでしょうか?
それぞれに問題が隠れていそうですね。

嫌いな場合はしかたありません。
でも、それが問題で健康に支障をきたしているのなら、なんとかするのが治療家!
そのための対策をもう少し考えてみましょう。

どうして嫌いになったのか?いつから嫌いなのか?
それらを尋ねていきながら、対策を考えます。

患者さんごとにいろいろな原因があるはずです。
肉を食べると太ると思っているとか、鳥肌をみると食べる気がしないとか、魚の骨を取るのが面倒だとか、単純に味が嫌いだとか…。

これは個別に対応する以外にない部分ですね。
でもこういうやり取りを通して、医療面接的には患者さんとの信頼関係が生まれるきっかけになったり、患者さんの性格的な部分の把握に役立ったりします。

次に、面倒だから食べない。
そういうお年寄りは結構います。
本当に多いです。

これも、面倒なのはどうしてなのか? 考えてみましょう。
もしかするとエネルギー不足が原因で動きたくなかったり、やる気が出なかったりしてるかもしれません。

その場合は、前回の

でも書いたエネルギー不足に対処すべきです。

タンパク質を摂っているけど吸収できていない場合

そして、摂ると胃もたれするから。
これも結構います。
日本人は一般的に胃が弱いですから。

これって2番目の「摂っているけど吸収できていない」場合のことですね。

胃酸がしっかり出ないと、タンパク質やミネラルは消化吸収がかなり落ちます。
さらに言えば、タンパク質が足りないと胃酸がシッカリつくれません。
まさに負のループです。

それから、タンパク質が未消化のまま大腸に到達すると、未消化タンパクが大好きな悪玉菌が活躍するので、便はとても臭くなります。
つまり、大便の臭いを尋ねれば、胃酸の状態が推測できるわけですね。

対策としては、脾胃を補う鍼灸治療をしてあげましょう。
栄養より胃酸の量や胃の動きが大事ですから。

それと、胃酸の出が良くなる食べ方をアドバイスしましょう。
これは以前に

「東洋医学×分子栄養学」から見た、健康にとって本当に大切な胃についての基本 その2

に書きましたので、こちらを参考にしてください。

ポイントだけ抜き出すと、下記のとおりです。

  • 食前にレモン水や酢の物、梅干しなどの酸っぱいものを摂る
  • 食前にパセリやミントの葉などを食べる
  • 肉や魚にレモンやスダチなどをかけてから食べる
  • 食事中に水分をあまりとらない
  • ひたすらよく噛む
  • 肉を生甘酒などで発酵させてから食べる
  • パイナップルやキウイなど消化を助ける酵素を多く含むフルーツを食べる
  • 肉は塊ではなくミンチなどの消化しやすい状態で食べる

あまりに胃の状態が良くない場合には、効率化の道具としてサプリメントを使います。

そうです、サプリメントは効率化の道具として使えるんです。
1000mg入りのカプセル1つに含まれるビタミンCの量は、レモン50個分に相当します。
これ、ビタミンCに限ればレモンを摂るより効率的ですよね。

元に戻りますが、ここで患者さんにススメるべきは、消化酵素です。

「サプリはちょっと…」という患者さんもそれなりにいます。
ですが、一時的にしかも効率的に身体の状態を良くするために使うだけだということをキチンと伝えれば、納得してくれる方は多いです。

これは分子栄養学的にとても大事なことです。
試してみてください。

タンパク質の消費量が多い場合

最後に、3つ目の「消費量が多い」場合。
これはタンパク質の消費量が増えているということですね。

学生時代に生理学で習った「異化」と「同化」を思い出してください。
ここでの「タンパク質の消費量が多い」というのは、「タンパク異化が亢進している」と置き換えられます。

ちょっと生理学の教科書を覗いてみましょう。
少し要約します。

同化とは、細胞の成長・増殖のために材料となる物質を取り入れ、新しい物質を合成している状態のこと。
異化とは、不要になったものを分解処理したり、エネルギーを取り出す反応の過程のこと。

この異化作用によってエネルギーを取り出す材料として使われるのは、主として糖質と脂質です。
タンパク質は身体の主要な構成成分なので、これはエネルギーに使いたくないわけですね。

ここ、栄養学的に根本原因を解決しようとするときに、とても重要です。

タンパク質が大量に使われてしまうのは、飢餓などの異常な場合のみだと、教科書にも書かれています。
では飢餓でもないのにタンパク異化が亢進するって、具体的にどんな状態なんでしょう?

答えは糖新生です。

ボク自身もそうだったんですけど、分子栄養学をキチンと勉強していくと、生理学とかを復習しなきゃならなくなって少し大変です。
正直言って学び始めた5年前を振り返ると、学生時代の生理学的な知識がほぼ半減していたのを思い出して、ゾッとします(笑)

糖新生に戻ります。

糖以外を材料に糖をつくること。
つまり血糖値が下がると、血液中の糖を一定量に維持するために肝臓で糖をつくるシステムが働くんでした。

このときにタンパク質が使われてしまうと、身体の構造を維持できなくなるんですね。
この状態が「タンパク異化の亢進」です。

これって栄養学的にはどういうことかというと、低血糖状態が頻繁に起こっているということです。
低血糖は、分子栄養学ではとても大事なことなんですけど、これだけでブログ3回分ぐらい書けてしまうので、またの機会に譲りますね。

血糖値が低い状態って、脳にとっても危機的な状況なので、糖新生でタンパク質を使ってエネルギーをつくったり、交感神経を優位にしたりして頑張ろうとします。

そこで、タンパク質の消費量が多い状態になって、整形外科的な疾患からの修復ができにくい身体になっってしまうわけです。

やっと繋がりましたね(笑)

ところで、『日本人の食事摂取基準2020』に書かれているタンパク質の摂取推奨量は、18~64歳の男性は1日65g、65歳以上の男性は60g、18歳以上の女性は50gです。

ちなみに栄養療法の世界では、体重1kgあたり1.2〜1.4g、 成長期や妊産婦はさらに多くなって1.5〜2.0gともいわれています。

これを食品に置き換えるとどんな感じなのか見てみましょう。

  • ごはん1膳:3.5g
  • 卵1個:6.3g
  • 納豆1パック:6.6g
  • さんま(焼き)1匹:17.4g
  • 牛リブロースステーキ:20.4g

体重60kgの人が卵で1日分を摂ろうとすると、11個半。 結構な量ですね。
やはり肉や魚などの動物性タンパク質をしっかり摂る必要がありそうです。

しかも、タンパク質は食べ貯めがきかないことはご存知でしょうか?
だからこそ、毎食ちょっとずつでも摂るように患者さんにアドバイスしてください。
動物性と植物性のタンパク質については、最近では両者を混ぜた方が良いといわれていますのでご参考までに。

まとめ

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
かなり長いブログになってしまったので、まとめておきましょう。

【本日のまとめ】

  1. 患者さんのサプリの摂取状況を確認しましょう
  2. 整形外科疾患にもっとも大事な栄養素はタンパク質です
  3. タンパク質が不足している理由は3つ、摂ってない、摂っても吸収できてない、消費量が多い
  4. 3つの原因に対処するアドバイスをしましょう
  5. タンパク質は食べ溜めができないのでこまめに摂るようアドバイスしましょう

今日はこの辺にして、また次回。

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