日々の食事、これだけ情報があふれてくると「何を食べたらいいのか」分からなくなりませんか?
「これを食べたら健康にいい」とか、「これは食べたらいけない」とか‥‥‥。
本サイトでも、低糖質などをご紹介してきました。
ですけど、低糖質だけやっていればいいなどとはまったく考えていません。
ということで、今回は”発酵食”について東洋医学的に考えてみます。
発酵が東洋医学的にどのように意味がある食事なのか、というお話です。
この記事では、
- そもそも「発酵」ってなに?
- 発酵食は東洋医学的にどうカラダに良いの?
- 発酵ってどうやって使ったらいいの?
- 発酵に関わる微生物にはどんなものがいるの?
- 発酵と酵素の関係ってどうなってるの?
- 結局、なにを食べればいいの?
などの疑問にお答えする内容についてまとめてあります。
発酵食がカラダにとって必要だという5つの東洋医学的理由
はじめに結論から書きます。
・発酵食を食べると「お肌」がキレイになる
・発酵の「菌と共生する」という考え方は、東洋医学と同じ
・発酵食を食べると、腸内環境が良くなる
・発酵を使うと、カラダにとって大切な酵素を取り込める
・発酵食は、気血水のもとになる質の良い食べ物
これらの内容について、ひとつひとつ見ていきましょう。
ただし、注意しておいてほしいことがあります。
それは、食の基本というのはパーソナルであるべきだということです。
もちろん最低限の共通するラインというのはあります。
余計な添加物をなるべく避けたり、食べ過ぎないように注意したり、ホンモノの発酵食を食べる機会を増やしたりといったことです。
でも誰もが同じものを同じ量だけ食べて健康になるなんてことはあり得ません。
だから自分でいまのカラダの状態を知って、食べるべきものとそうでないもの、自分に合った量などを判断できるようにすることが、健康に生きていくために必要になるわけです。
発酵ってなに?
まずは、発酵についての基本から始めましょう。
・そもそも発酵とはどういうことなのか?
・発酵食にはどんなメリットがあるのか?
について説明していきます。
そもそも“発酵”ってなに?
まずは発酵について簡単に説明しておきましょう。
発酵とは「人間にとってメリットのある微生物の営み」のことです。
微生物たちは食べ物にくっついて、いろいろなことをします。
それが人間にとって「美味しい」とか「栄養が増える」とか「腐らない」などのメリットがあれば、それを発酵と呼びます。
デメリット、つまり「腐る」とか「不味くなる」とか「臭い」などであればそれを腐敗と呼びます。
言い換えると、微生物にとって発酵と腐敗は同じこと。
人間の側の勝手な線引きってことです。
だからこのラインは、国や文化によっても違います。
例えば、大豆が糸を引いていたらほとんどの外国人は腐っていると思いますよね。
もちろん実際に食べる気にはならないはずです。
でも納豆好きな人にとっては、この糸も含めて「納豆って美味しい!」と思うわけ。
発酵って、人によっても、文化によっても違うということなんです。
ちなみにこの発酵の主役の微生物たちは、カビ、酵母、細菌などに分けられます。
発酵は東洋医学的にカラダにどういいの?
次は、東洋医学的に発酵食は何がどういいのか? について説明します。
発酵食の一般的なメリットはいろいろあります。
・食品の保存性が高まる〜つまり腐りにくくなるってこと
・腸内環境が良くなる〜つまり免疫力が上がって病気になりにくくなるってこと
・美味しくなる〜つまり発酵調味料で漬けると旨みが増すってこと
・栄養価が高まる〜つまり微生物たちが酵素や補酵素をつくってくれるということ
まだまだ他にもたくさんあります!
では東洋医学的に考えた時にカラダにどういいかについて少し考えてみます。
まず結論から言うと、「お肌がキレイになる!」 これを東洋医学的に説明してみます。
上でも書いたように、発酵食は腸内環境を良くしてくれます。
つまり大腸の調子を良くするってこと。
東洋医学では肺という臓と、大腸という腑は結びつきが強いと考えます。
だから、ホンモノの発酵食を食べると大腸が元気になり、肺の調子も良くなるってことなんです。
肺はカラダの表面、つまり皮膚を担当しています。
簡単にいうと、風邪などの邪気が外から入ってこないようにバリアのように守っているわけ。
そこで、肺の状態が良くなると風邪などを引きにくくなる、つまり免疫が上がるんですね。
ところで肺は、肌の調子にもかなり関係しているんです。
肺の調子が悪いと、肌がカサカサしたり、ツヤがなくなったり、くすんだりするわけ。
逆に肺の調子が良いと、お肌の調子まで良くなるってこと。
だから「発酵食を食べると、お肌の調子が良くなる」わけ。
ただしそこにはホンモノの発酵食という条件がついています。
ホンモノの発酵食とは?
次は、ホンモノの発酵食について書きます。
どうせ食べるならホンモノがいいですからね。
発酵の使い方には2種類ある?
まずは発酵の食への取り入れ方について。
食事に関していうと、発酵の使い方には2種類あるんです。
ひとつめは、そのまま食べる。
発酵している食品をそのまま食べることで、カラダに酵素や補酵素、乳酸菌などの微生物(腸内に届いて腸内環境を良くしてくれる)、その他いろいろな良いものを取り込むわけです。
発酵食品には醤油、味噌、酢、味醂、納豆、ヨーグルト、甘酒などいろいろありますね。
これは分かりやすいですね。
もうひとつの方法は、発酵を漬け床に使う。
ぬか漬けや味噌漬けはその代表。
他にも甘酒や醤(ひしお)などで漬けた食べ物を食べることなどがこれです。
もちろん買ってきて食べることもできますが、ちょっと手間はかかるけど自宅で漬けることで、美味しくて、ほんとうにカラダに良いものが食べられます。
ホンモノってどういうこと?
次はホンモノの発酵食ってどういうことなのかについてです。
発酵食というのは、微生物の営みによってつくられるカラダに良い食べ物でしたね。
微生物をカラダに取り込むことで、そのまま腸まで届いて腸内環境を良くしてくれるというメリットがあります。
※最近では菌の死骸(菌体成分と言います)でも、腸にいいことがわかってきました。
その一方で、微生物がつくってくれた酵素によって消化の負担が減ったり、補酵素によって代謝が良くなったり、旨み成分によって美味しくなったりというメリットもあります。
そうするとホンモノの発酵食とは、微生物が生きているか、微生物がつくったものがキチンと残っている食べ物ということになりますね。
もうちょっと具体的な話をしましょう!
例えば「納豆」
スーパーで買ってきたものでも、納豆菌は生きています!
納豆菌は腸まで届くし、腸内環境を良くするといわれているので、ホンモノの発酵食ですね。
ただし食べ過ぎは注意!
理由はいろいろありますが、ここで問題にしたいのはイソフラボン。
これって女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをするんですけど、食品安全委員会の「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」(2006年)によれば、閉経前の女性が一日に取っていいイソフラボンの上限値は75mg。
いろいろな食品中に含まれる量は、味噌汁1杯に約6mg、納豆1パックに約35mg、豆腐1丁に約60mg。
つまり、せいぜい一日に1〜2パックまでですね。
お味噌はどうでしょう?
残念ながら、スーパーでパックされて売っているものは発酵が止まっています。
よくラベルを見てみると、「酒精」と書かれていますね。
これってアルコールのことで、これで発酵を止めているんです。
※なかには発酵を止めていないホンモノのお味噌もあって、それはガス抜き栓がついているはずです
理由は、酵母などが生きたままだと炭酸ガスを発生させるので、密封したパッケージでは容器が膨張し商品価値がなくなってしまうから。
でも、発酵が止まっているということは、生きた味噌ではないということ。
なので、いくら置いておいても一切熟成は進みません。
そもそも、スーパーなどで市販されている商品のほとんどは工場で作られていて、温醸法という方法で発酵を強制的に早めて3ヶ月ほどで完成させているんです。
だから味噌本来の持つ効果は、あまり期待できないですね。
もちろん微生物がつくってくれた酵素などのカラダに良いものはそれなりに入っています。
そうそう、東洋医学的にみてホンモノの発酵食がいい理由は、食べ物は“質”が大切だからですね。
気血水といったカラダをつくるもとになるのが食べ物。
だからこそ、質の良い食べ物を適量とるようにしましょう!
発酵オススメ書籍
このブログで興味を持って、発酵についてもっと学んでみたい方のために、オススメの本を何冊かご紹介します。
・塩麹と甘酒で作る調味料 / 伏木暢顕 / 日本文芸社
発酵食を生活に取り入れてみたい初心者向けの塩麹と甘酒を使ったお料理本。
私の発酵のお師匠の著書。
・すべてがわかる!「発酵食品」事典 / 小泉武夫監修 /世界文化社
発酵の入門書。
ひと通りのことがわかります。
あの小泉先生の監修。
・トコトンやさしい発酵の本 / 協和発酵工業編 / 日刊工業新聞社
発酵についてキチンと勉強したい方向け。
詳しいけれどわかりやすい。
微生物との快適な付き合い方って?
次は、発酵の主役である微生物との快適な付き合い方について考えてみます。
除菌、滅菌って、無理じゃない? という話です。
2つの付き合い方
微生物との関係には2通りあります。
・ひとつは、徹底的に排除する方法
・もうひとつは、一緒に生きる方法
“抗生物質”(antibiotics)って、知っていますよね。
何をする薬かというと、菌を殺す薬のことで、一般的には抗菌薬と同じ意味です。
感染症にかかると処方される薬です。
青カビから見つけられたペニシリンが最初。
これって、ひとつめの微生物を排除する方法ですよね。
ところで、“プロバイオティクス”(Probiotics)という言葉を聞いたことがありますか?
人体に良い効果をもたらす微生物や、それらを含んでいる食品などのことです。
抗生物質の副作用や耐性菌などに対する批判から生まれたもので、簡単にいうと微生物と「共生」するという考え方です。
いままでの医学の考え方は「細菌やウイルスを叩く」、つまり殺菌とか滅菌とかという考え方でした。 もちろんこれも大切かもしれませんが、カラダにはたくさんの微生物がいて、これを全部殺すことなんかできるわけありません。
しかも、腸の中には数百種類、数百兆の微生物がいるといわれていますし、それ以外には口の中、皮膚にも常にたくさんの微生物がいることがわかっています。
これを殺すんじゃなくて、菌のバランスを良い状態にすることで健康になろうという考え方がプロバイオティクスです。
なんだか良いでしょ?
じつはこれって東洋医学の考え方とすごく共通する部分があるんです。
東洋医学では、病気になるのは邪気が入ってきたり、カラダのバランスが崩れるからだと考えるんですけれど、邪気は殺すんじゃなくて追い出すだけで良いし、そもそもはじめから邪気が入ってこないようにカラダのバランスを整えておくことが大切だ、という考え方をします。
なんだか似ていませんか?
この方がカラダに優しそうでしょ?
菌と共生するためには?
次は「菌といい状態で共生する方法」についてです。
もう言いたいことはだいたい想像できますよね?
そうです!
菌と良い関係になるためには、質のいい発酵食を食べればいいんです。
そうすると腸内環境が良くなる=良い菌が増える、つまり健康にイイということ。
これは腸だけの問題ではありません。
皮膚だって毎日石鹸(抗菌作用)でゴシゴシこすれば、良い菌も悪い菌も全部はがされてしまいます。 じつは皮膚の常在菌も、良い状態にしていれば嫌な匂いがしない状態にしてくれるし、悪い菌から守ってもくれて、皮膚を快適な状態に保ってくれるんです。
滅菌、殺菌が無理だとわかれば、お湯で皮膚の汚れを洗い流すだけでいいということもわかりますよね!
そうそう、腸内環境という意味では最近は“プレバイオティクス”という考え方もあります。
これは食物繊維やオリゴ糖などの良い腸内細菌(善玉菌)の好物を食べるという考え方です。
食物繊維は分解されるとオリゴ糖になりますからね。
これもオススメなんですが、例えば食物繊維を分解するにはセルラーゼという酵素が必要なんですけど、これって人間は持っていないんです。
じゃあどうすればいいかというと、生きた発酵食を食べるとそのなかにセルラーゼが入っていたりするんですね。
どうです、面白いでしょう?
ホンモノの発酵食を食べて、プロバイオティクスで健康になりましょう!
酵素栄養学って?
次は、酵素ついて考えてみます。
ところで、酵素栄養学って知っていますか?
酵素がカラダにいいと言われるようになって久しい気がしますが、どうカラダにいいのか知っていますか?
ここでは、カラダの酵素をムダ遣いしないためにどうするか? ということを書きます。
体内酵素と体外酵素
まず、酵素には2通りあります。
ひとつは体内酵素で、もうひとつは体外酵素。
最初に断っておきますが、ここで紹介する考えは、エドワード・ハウエル(Edward Howell)の「酵素栄養学(Enzyme Nutrition,1985)」 (エドワード・ハウエルの著書としては「医者も知らない酵素の力」が分かりやすいです) にもとづいています。
彼が臨床結果をもとに提唱した考え方で、 実験によって実証されたものではないので、仮説と言っていいかもしれません。
世の中で「酵素ってカラダにいいですよ」というほとんどの発言では、 知ってか知らずか、この酵素栄養学の考え方を使っているように思います。
話をもとに戻します。 酵素には体外酵素と体内酵素があります。
体外酵素は食物酵素ともよばれます。
これは生の食材に含まれていて、食物自身を消化するための酵素です。
一方、体内酵素は潜在酵素ともよばれます。
これは人間が生まれつき持っている酵素で、消化酵素と代謝酵素の2つを合わせたものです。
消化酵素は、食べたものを消化・吸収するために必要なものです。
代謝酵素は、消化以外の生命活動に必要なものです。
ちょっと複雑になってきたので、整理してみましょう。
・体外酵素=食物酵素
・体内酵素=潜在酵素=消化酵素+代謝酵素
という関係になっています。
このうち潜在酵素は補給できないということになっています。
ですから、「なるべく食物酵素を多く含む食べ物を食べて、潜在酵素を節約しましょう」ということになります。
ただし、酵素は加熱で失活(効果を発揮できなくなる)するので、 なるべく生で食べるのが良いということになるわけ。
ここでやっと発酵の登場!
どうして煮たり焼いたりするかというと、食べやすくするため。
じつは発酵というのは、煮るのと同じような調理法なんです。
発酵させるということで、生で、栄養素や酵素を失わず、美味しく、消化にいい食べ物にできるということ。
結びつきましたか?
東洋医学と酵素栄養学
話は変わりますが、東洋医学には“精”という考え方があります。
これは簡単にいうと、気血水などのカラダをつくる物質のもとになるもののことです。
この精には大きく分けて2種類あります。
ひとつは先天の精、もうひとつは後天の精です。
先天の精は、生まれつきカラダに備わっていて、ドンドン減っていくんです。
だから「なるべく浪費しないようにしましょう」というのがいわゆる養生法。
後天の精は、食べ物と空気から得られるもの。
だから、健康で長生きするには「なるべく質のいい食べ物を取って、いい空気を吸いましょう」ということになります。
なんだか似ていますよね! そう思って表にしてみました。
酵素栄養学 | 東洋医学 |
---|---|
潜在酵素 | 先天の精 |
食物酵素 | 後天の精 |
ここでやっと東洋医学と酵素栄養学が結びつくでしょう?
そうなんです。
似たようなことを言っているんですよ。
つまり、酵素を豊富に含んだ食べ物を食べると、人間が生まれつき持っている精=潜在酵素を節約して長持ちさせる(健康で長生きする)ことができる、ということ。
そして、酵素を豊富に含んで美味しい食べ物は、発酵食ということになりますね。
ここでは、酵素栄養学と東洋医学の関係について考えてみました。
何を食べればいいのか?
最後に、「食を全体で見る視点の重要性」について考えてみます。
いろいろ分かったけど、「結局、何を食べればいいの?」って思いませんか?
私がなぜ発酵の良さについて書き初めたかと言いますと、「これを食べれば健康になる」とか、「これは食べちゃダメ」とか、そんなことを際限もなく言っていても、結局は健康になれないってことを知ってもらいたかったからです。
「じゃあどうすればいいのか?」というと、その人に合った食事をすることです。
そんなことについて考えてみます。
食をパーソナルにみる視点の大切さ
ところで、暑がりな人と寒がりな人が同じものを食べて健康になると思いますか?
そう、明らかにムリそうですよね。
結局、食の基本というのはパーソナルであるべきだということです。
もちろん最低限の共通するラインというのはあります。
これは、余計な添加物をなるべく避けたり、食べ過ぎないように注意したり、ホンモノの発酵食を食べる機会を増やしたりといったことです。
でも、誰もが同じものを同じ量だけ食べて健康になるなんてことはあり得ません。
だから自分でいまのカラダの状態を知って、食べるべきものとそうでないもの、自分に合った量などを判断できるようにすることが、健康に生きていくために必要になるわけです。
私はその基準を東洋医学に求めました。
いわゆる薬膳的な考え方です。
実はこれ、そんなに難しいことではないんです。
自分のカラダが熱の方向にあるか冷えの方向にあるのか、カラダに必要なものが不足しがちなのか余りがちなのか、そんな視点でみてあげるとだんだん分かってきます。
なぜそんなことまで勉強するかというと、自分のカラダだからです。
そして、カラダは変化するからです。
変化に応じて食事の内容や量を変えなければ意味がないからです。
つまり、カラダは食べたものでできているからなんです。
さあ、食を見つめなおして健康になりましょう!
まとめ
今回の記事のまとめです。
東洋医学的にみても、発酵はいろいろな意味でカラダに良いんです。
今回の記事のまとめ
・発酵食を食べると「お肌」がキレイになる
・発酵の「菌と共生する」という考え方は、東洋医学と同じ
・発酵食を食べると、腸内環境が良くなる
・発酵を使うと、カラダにとって大切な酵素を取り込める
・発酵食は、気血水のもとになる質の良い食べ物